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ボエティウス『哲学の慰め』

ボエティウス(480?-524)の遺著。ボエティウスは若くして諸学をきわめ(『音楽教程』『算術教程』などをわずか20歳の頃に著している)、弱冠30歳にしてテオドリック王のもとで執政官となり、次いで宰相に任ぜられて、プラトン的な理念のもと善政を行うよう努めるが、讒訴により死刑に処せられる。(背後にはローマ人とゴート人の緊張した関係もあったようである。このあたりの事情は訳者解説に詳しい。)本書は獄中で書かれたもので、この運命の急転を受けて失意のどん底にある著者を「哲学」の女神が慰めるという筋になっている。

運命(ないし摂理)が一見きわめて過酷であるにも関わらず結局は良いものであることを論じており、全体として神義論的な構成を取っているが、他方で議論は古代の伝統の影響を強く受けており、ジョン・ポーコックが述べるように、そのことは「彼のキリスト教信仰の、事実をではないにしても性質を、議論の余地あるものにしている」(The Machiavellian Moment, p.37)ように思える。「哲学」が主導して対話を進めてゆく形式もプラトンの対話篇を彷彿とさせる。因みに訳者によれば摂理および運命についてのボエティウスの考えはプロクロス(412-485)のそれに拠っているようである。

哲学の慰め (1969年) (筑摩叢書)

哲学の慰め (1969年) (筑摩叢書)