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『プラトン全集』第1巻 / 売野機子『しあわせになりたい』

プラトン全集』第1巻

いわゆる第一テトラロギアに属する四篇を収める。『弁明』『クリトン』は岩波文庫の久保訳を持っていたので再読した形になる。

『エウテュプロン』

被告人として公訴に赴くソクラテスと、父を殺人罪で訴えるべくバシレウスの役所に来ていたエウテュプロンとの対話。敬虔とは何かを知っていると主張するエウテュプロンの議論が吟味されるが、エウテュプロンの退場により結論に辿り着かずに中断される。

ソクラテスの弁明』

ソクラテスの公訴での弁明。ソクラテスを誹謗する「最初の告訴人」たちを、実際の告訴人であるアニュトス一派と区別した上で、それぞれの「告訴」に対して弁明を行う。有罪が確定し、ついで死罪が決定された後に、投票者たちに対して言付けをして終わる。

『クリトン』

およそひと月の猶予期間を経て死刑が執行される前日にソクラテスとクリトンとが交わした対話。脱獄を勧めるクリトンに対し、国法にそむくことは不正であること、そして正しい生き方にのみ価値があること、をソクラテスが語る。

パイドン

パイドンがエケクラテスにソクラテスのいまわの際の様子を伝える、という設定において伝聞体で描写される、死の直前のソクラテスとケベス、シミアスを中心とする対話。死に直面して恐れをいだくことの当否から魂の不死という主題の吟味に話が移る。想起説から魂の不死を論証するソクラテスに対し、シミアスは魂の調和説を、ケベスは魂が(肉体より強靭であるにも関わらず)可死のものであるという説をそれぞれ提起し、ソクラテスが再度それらを駁し、死後の魂についてのミュートスを語る。議論を終えるとソクラテスは従容として死に就く。

魂の可死を論証する説が出揃って認知的不協和に陥った周囲の人びとに対して、misologos とならないよう諭すくだりが印象的だった。もちろん他にも読みどころはあまたあるのだけど。

売野機子『しあわせになりたい』

前二作と比べても軽快で読みやすい。どれも良いけれどやはり表題作が秀逸だと思う。

プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン

プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン