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坂井豊貴『社会的選択理論への招待』

  • 坂井豊貴『社会的選択理論への招待』日本評論社、2013年。

社会的選択理論の概説書。第1章ではその歴史的背景(すなわちボルダとコンドルセの業績)を概観し、第2-4章では様々なルールを比較して利点と欠点を論じる。第5章はアローの不可能性定理を論じ、第6章はロールズ、センらの社会厚生に関する議論への応用を見る。終章である第7章では、自民党憲法草案を引きつつ、政治的判断の防波堤としての正しい投票制度の必要を論じる。

Arrow の不可能性定理の本質が二項独立性にあり、そして二項独立性は必ずしも重要な制約ではない(とりわけ社会厚生に関しては無意味な制約である)と強調し、陥穽に嵌らないよう注意を促していることが印象に残った。また近年の改憲問題に関連して、著者はカプリンとネイルバフによる「64%多数決ルール」*1を論じ、96条の現状肯定の論拠として挙げているけれども、これがよい論拠であるかは必ずしも明らかではないと思う。もっとも小選挙区制が社会的選択理論の観点から見て問題含みであるという終章での指摘はもっともだ。

社会的選択理論への招待 : 投票と多数決の科学

社会的選択理論への招待 : 投票と多数決の科学

*1:いくつかの数学的仮定のもとで、複数の論点に基づいて「過半数の有権者がxからyへの変更を望む」場合に、なお隠れた選択肢 z が存在して x, y, z の間で選好のサイクルが生じる、といった可能性を排除する基準が 64% であるという論拠に基づく