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アセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』

  • アロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』上下巻、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2016年。

国家間の経済格差はいかにして生じるのか、という問いをテーマとする。この問いには既に様々な観点からの解答が試みられており、気候をもとに説明する地理説(モンテスキューに始まり、J. サックス、J. ダイヤモンドなど)、宗教や倫理の相違に帰する文化説(M. ウェーバーなど)、統治者の無理解を貧困の原因とする無知説(多くの経済学者)がある。 本書はこれら全てに反対して、むしろ政治・経済制度の相違こそが現在の格差を最もよく説明する、と主張する。著者によれば、包括的な政治制度と経済制度が相互作用し好循環を生むことで繁栄が生まれるのであり、逆に収奪的な政治制度と経済制度の相互作用による悪循環が貧困を生むのだ。包括的な政治制度とは、ある程度の中央集権化が進んでいる制度であって、なおかつ特定の小集団に権力が集中しておらず、法による平等な支配を志向ており、また権力間のチェック&バランスが働いている多元的な制度のことである。政治制度が包括的であれば、経済的に収奪されている人びとは自らの要求を通しやすくなる。逆に、包括的な経済制度――奴隷制などの収奪的経済関係を排除し、独占の緩和を志向する制度――が存在すれば、収奪的な政治制度のインセンティヴは減じる。これが逆に回ると後者の悪循環になる。このことの具体的な論証は古代から現代までの多種多様な諸国家の盛衰についての史実をもとに行われる。著者によれば、ソ連の50-60年代の経済成長、および今日の中国の急速な経済成長も、こうした議論を反証するものではない。前者は技術的なイノヴェーションの抑制ゆえに長続きしなかったし、後者についても既存技術の利用と投資を基盤としているに過ぎず、「創造的破壊」の進行は政治的に抑制されている。 一方で、収奪的な制度が包括的な制度へと転化すること、あるいはその逆、は偶発的な要因にも大きく左右されるもので、それゆえある地域の今後の発展について現状をもとに長期的な予測を立てることは本質的に不可能であるとも指摘される。

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)