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S. バロン=コーエン『自閉症スペクトラム入門』

自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識

自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識

  • サイモン・バロン=コーエン『自閉症スペクトラム入門:脳・心理から教育・治療までの最新知識』中央法規、2011年。

書名通りいくつかの側面から自閉症スペクトラムについて解説したもの。著者は自閉症研究の第一人者であるらしい。以下はメモ書き。なお最新の診断マニュアルでは文中の細かなカテゴリーが撤廃されているようであることには注意したほうがいいかもしれない。

  • 自閉症スペクトラムは社会的コミュニケーションの困難と反復的行動・狭い興味の二点から特徴付けられる

  • いわゆる古典的自閉症アスペルガー症候群には言語の遅れの他にもいくつかの症状の違いがある(オウム返し、手をひらひらさせる、など)

  • 自閉症スペクトラムの有病率は診断基準の変化とともに上昇してきた。70年代までは古典的自閉症(4/10000 ほど)のみが診断されていたが、90年までには AS がこれに加えられ、90年代なかばには非定型自閉症と PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)もスペクトラム内に入った。現在有病率は 1% とされる

  • 自閉症が先天的なものであるという理解も、同様に、最近になって確立されてきたことである

  • 自閉症の親や兄弟の AQ スコアは平均して 26 点である(「広義の自閉症の表現型 Broader Autism Phenotype」。なお自閉症スペクトラムの平均値は 32、男性 17、女性 15)

  • 自閉症の心理学的側面に関しては 5 つの仮説がある

長所 短所
実行機能障害仮説 注意の切り替えの困難を説明する 関心の内容に触れていない
弱い中枢性統合仮説 細部への注意、卓越した記憶力と限局された技能を説明する 統合の困難さがどのレベルで起こるか明らかにできていない
マインドブラインドネス仮説 社会性に関する症状を説明する それ以外の症状を説明しない、マインドブラインドネス自閉症に限らない
共感化-システム化仮説、超男性脳仮説 自閉症・AS 双方の社会的-非社会的特徴、および般化の困難を説明する*1
大細胞仮説 神経レベルで検証可能 視覚的困難しか説明しない、自閉症に限らない、一部の結果の矛盾
  • 自閉症はいくつかのホルモン要因をもつ

*1:般化の困難とシステム化は――とりわけ後者が一部の AS 者の数学の能力の高さなどを説明することを考えれば――矛盾するように思えるけれども、各システムを独立したものと見なし、細かな差異に注目してしまう、ということらしい。