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小杉『イスラームとは何か』 / 井筒『イスラーム文化』

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

イスラームにかんする入門書二冊。いずれも刺激的だった。前者はイスラームの原理と史的展開を時系列に沿って概説したもので、読んで常識が身についた。後者は井筒の1982年の講演録。主に経済人を相手にした講演だったようなのだけど、文化の根柢をさぐるというだけあって内容はごく抽象的な精神面に焦点を合わせている。とりわけ第III章(「内面の道」)におけるシーア派の世界理解についての記述は精彩を放っていて、たんにイラン革命に伴う時局的意義がどうこうという水準を超えている。

井筒はシーア派的なものの見方を、神-人の垂直的関係に重きを置いた「メッカ期の精神」に基づくイスラーム(のイラン的精神による純化)と捉え、人びとの水平的関係を規定するメディナ期的イスラームと対比しているけれども、小杉本はマッカ期-マディーナ期に精神性の違い・対立を読み取る見方は obsolete なものとして斥け、むしろマッカ期に成立したクルアーンのテクストはその後の内容の基礎となっているのだと言う。ここから導き出されるのは縦・横の関係に対するバランスの取れた主流派の見方で、ここに焦点を当てるかぎり、シーア派の教義は――少なくとも紙幅の限られた概説書では――小杉本のように「理想主義的」で「現実離れ」したものと書いて済ませるほかなくなるのだろう……と思うけれど、これはしろうとの揣摩臆測にすぎない。