読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

鈴木ほか『ワードマップ 現代形而上学』

ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎

ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎

  • 鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『ワードマップ 現代形而上学新曜社、2014年。

概要

現代形而上学の諸トピックを紹介する入門書。人の同一性、自由と決定論、様相、因果、個物と普遍、存在依存と人工物の存在論を主に取り上げる。

第1章は人の同一性を扱い、身体説(人の同一性は身体の同一性に基づく)、心理説(同様)、および同一性の重要性を斥け心理的連続性を重視するパーフィットの議論が順に紹介される。第2章は自由と決定論のジレンマを主題とし、両立論、リバタリアニズム、強硬な決定論が取り上げられる。

第3章は可能世界を論じる。まず可能主義(可能世界は具体的対象として存在する)と現実主義の対立を取り上げ、ついで本質に関するクリプキの議論、および対応者の理論を紹介する。第4章は因果性を論じる。規則性を手がかりとするヒューム的な因果観、反事実条件的分析、アームストロング流の普遍者としての因果関係説、因果を出来事ではなく(起こらなかったことを含む)事実間の関係と見なす説、が紹介される。

第5章は実在論唯名論の長所・短所を比較する。第6章は個物の存在論的還元をテーマとし、普遍者の束説・基体説・トロープの束説が論じられる。

第7章は存在依存を扱う。一般に、「必然的にαが存在すればβも存在する」とき、αはβに存在依存する、という。もちろんこの単純な定義には改良の余地があり、以降この概念を現実の諸対象に適用するさいの問題点が挙げられる。終わりに付随性 supervenience と依存性の差異についても触れられる。すなわち後者は前者より弱く、自然主義・物理主義的前提から自由である。第8章は存在依存の概念をより細分化することにより、文化的・制度的対象を存在論的に扱う可能性が示唆される。すなわち、歴史的依存(必然的に、αが存在すればβがそれ以前または同時に存在する)と恒常的依存(必然的に、αが存在すればβも同時に存在する)、固定的依存(必然的に、αが存在すれば特定のβも存在する)と類的依存(必然的に、αが存在すれば類βに属するあるxが存在する)などの概念を用いて、存在する(しうる)ものが分類可能である。例えば志向作用への依存関係に基づきカテゴリーを組み立てるならば、志向作用自体は(自己依存するために)固定的・恒常的依存、かつ類的・恒常的依存する存在者であり、他方で物理的対象は類的あるいは固定的な仕方では依存しない。芸術作品は固定的・歴史的に、かつ類的・恒常的に依存し、製品や多くの制度的対象は固定的に依存しない一方で類的・恒常的に依存する(243-244頁)。

第9章は附論であり、本書で論じられなかったトピックや隣接分野が簡単に紹介される。

所感

トピックごとに論点がクリアにまとまっており参考文献もそのつど紹介されるので手元にあると便利だと思う。借りて読んだけど買った方がいいかもしれない。

上でやや詳しく書いた存在依存に関する記述が興味を惹いた。人工物や制度的対象のありかたについては(廣松を読んだこともあって)興味を持っていたし、インガルデンや受容美学に漠然と関心を抱いていたのもある。もっとも、あれはこれにかくかくの仕方で依存する、という関係についてグラフを描くこと、あるいは依存の仕方について分類整理すること、が何を可能にするのかはよく分からない。