読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

田中久美子『記号と再帰』

記号と再帰: 記号論の形式・プログラムの必然

記号と再帰: 記号論の形式・プログラムの必然

メモなど特に取っていなかったので読んだことと食い違った書き方をするかもしれない。別にメモを取れば食い違わないというわけでもないだろうけど。

いかにして記号論をプログラミング言語に適用するか、というのが本書の課題である。手始めにソシュールの二項モデルとパースの三項モデルが対比され、それがーー驚くべきことにーー関数型プログラミングオブジェクト指向にそれぞれ対応付けられる。その後も、λ計算の記号論的意義や、パースの三つのカテゴリー論のプログラミング言語への適用、あるいは再帰における記号の「投機性」について次々と仮説が提示される。

分析哲学的なアプローチがなされるものと思っていたので、ハイデガーフーコー、はてはデリダなどが引用され、取り上げられていたのには戸惑ったし、疑問に思えた。それらの引用全てが当を得ないものだとまでは思わない、が、例えば "x = f x" (Haskellでのfの不動点の計算) と「差延」の類似性を指摘することにどれほどの意味があるのだろう?

とはいえ、読み物としては面白く、またプログラムについての諸概念の直感的な整理に役立つ内容ではあったと思う。