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ボエティウス『哲学の慰め』

ボエティウス(1969)『哲学の慰め』渡辺義雄訳、筑摩書房。 ボエティウス(480?-524)の遺著。ボエティウスは若くして諸学をきわめ(『音楽教程』『算術教程』などをわずか20歳の頃に著している)、弱冠30歳にしてテオドリック王のもとで執政官となり、次い…

宇野重規『保守主義とは何か』

宇野重規『保守主義とは何か:反フランス革命から現代日本まで』中公新書、2016年。 「保守主義」をそのライヴァルから規定されるものと捉え、フランス革命、社会主義、大きな政府、との対比に一章ずつを充てて描く。第四章では日本における保守主義(の欠如…

高田里惠子『文学部をめぐる病い』

高田里惠子『文学部をめぐる病い:教養主義・ナチス・旧制高校』松籟社、2001年。 幾人かの独文学者たちの蹉跌のさまを吟味して戦前の日本的教養主義の帰趨を描く。とりわけ中心的に槍玉に挙げられるのがヘッセの初の邦訳者にして戦時中には翼賛会文化部長を…

村田沙耶香『コンビニ人間』

村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋、2016年。 ひといきに読み終えたけれど決して軽い本ではなかった。登場人物の誰にも共感はできないことは前提として、主人公は硬直的だが筋は通っている、「白羽」はずっと混乱しているけれども混乱の仕方が(主人公が正…

黒田覚「象徴天皇制の意義と機能」

黒田覚「象徴天皇制の意義と機能」清宮四郎・佐藤功編『憲法講座1』(有斐閣、1964年)所収 「物」としての象徴は特定の抽象的意味内容を表現する。「物」の象徴的機能とは、その「物」を通してそれが示す意味内容の体験が強化されることであり、そのように…

ダメットの全体論批判(金子『ダメットにたどりつくまで』3章)

以下に関するメモ。内容要約。 金子洋之『ダメットにたどりつくまで』(勁草書房、2006年)pp.79-118. 古典論理的な推論実践を否定することがダメットの目標だが、そのために、まず論理の改訂を不可能とするタイプの議論への反駁が必要である。全体論はこの…

『プラトン全集』4巻

『プラトン全集』4巻、岩波書店、1975年。 『パルメニデス』『ピレボス』を収める。 『パルメニデス』 全体はケパロスの独白。ゼノン・パルメニデス・ソクラテスの間の対話を、その場に居合わせたピュトドロスがアンティポンに伝え、さらにアンティポンから…

『プラトン全集』第6-7巻

『プラトン全集』第6-7巻、岩波書店、1975年。 たまたま図書館で第4-5巻が借りられていたので先にこちらを読んだ。 第6巻 『アルキビアデス I-II』、『ヒッパルコス』、『恋がたき』を収める。訳者解説によればプラトンの真作と見なされているのは『アルキビ…

『プラトン全集』第3巻

『プラトン全集』第3巻、岩波書店、1976年。 『ソピステス』『ポリティコス』を収める。解説によれば、文体統計学的に見てこれらはいずれも後期対話篇に属し、とりわけ『ソピステス』は『パルメニデス』篇におけるイデア論の自己批判を受けて記されたもので…

『プラトン全集』第2巻

『プラトン全集』第2巻、岩波書店、1974年。 『クラテュロス』『テアイテトス』を収める。なお後者はのちに岩波文庫にも入っている田中美知太郎訳。 『クラテュロス』 ヘルモゲネス・クラテュロスとソクラテスとの対話。名前の正しさを主題とする。まずヘル…

『プラトン全集』第1巻 / 売野機子『しあわせになりたい』

『プラトン全集』第1巻、岩波書店、1975年。 売野機子『しあわせになりたい』白泉社、2013年。 『プラトン全集』第1巻 いわゆる第一テトラロギアに属する四篇を収める。『弁明』『クリトン』は岩波文庫の久保訳を持っていたので再読した形になる。 『エウテ…

M. デュラス『破壊しに、と彼女は言う』

マルグリット・デュラス『破壊しに、と彼女は言う』河出書房新社、1978年。 69年発表のテクスト。もっともそうであることは作品を読み終えてから知った。全体としてよく分からない。ステーン-アリサ-マックス・トルの間に一種の共謀関係が存在して、ともか…

伊波普猷『古琉球』

伊波普猷『古琉球』岩波文庫、2000年。 日本における沖縄研究の嚆矢。それまで時に意味内容さえはっきりとは知られなかったオモロや口碑・家譜を収集し、民俗学的に考究したもの。 いわゆる琉球処分に琉球と日本の政治的再結合をごく素朴に見出す態度が、同…

中井久夫『治療文化論』

中井久夫『治療文化論』岩波現代文庫、2001年。 今日の精神医学の営みを、広義の「治療文化」から捉えなおす試み。『西欧精神医学背景史』 を読み返す機会があり、水曜あたりにその参考文献として読んだ。『背景史』初読時は情報を満載した図表の数々に恐れ…

吉田『世論調査と政治』 / 岩本『世論調査とは何だろうか』 / 坂井『多数決を疑う』

吉田貴文『世論調査と政治:数字はどこまで信用できるのか』講談社+α新書、2015年。 岩本裕『世論調査とは何だろうか』岩波新書、2015年。 坂井豊貴『多数決を疑う』岩波新書、2015年。 世論調査本を二冊読んだ。世論調査の結果を用いるときは質問内容と調査…

坂井豊貴『社会的選択理論への招待』

坂井豊貴『社会的選択理論への招待』日本評論社、2013年。 社会的選択理論の概説書。第1章ではその歴史的背景(すなわちボルダとコンドルセの業績)を概観し、第2-4章では様々なルールを比較して利点と欠点を論じる。第5章はアローの不可能性定理を論じ、第6…

アセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』

アロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』上下巻、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2016年。 国家間の経済格差はいかにして生じるのか、という問いをテーマとする。この問いには既に様々な観点からの解答が試みられており…

P. K. ディック『高い城の男』

フィリップ・K・ディック『高い城の男』ハヤカワ文庫、1984年。 62年の作。連合国が枢軸国に敗北した if を描く。秀作。しかし結末がよく分からない。 『易経』が本書においてたんなるギミックをはるかに越える役割を果たしていることは衆目の一致するところ…

宮田『中東イスラーム民族史』 / Searle *Mind, Language and Society*(『心・言語・社会』)

宮田律『中東イスラーム民族史』中公新書、2006年。 中東の三民族の起こりから中東諸国ナショナリズムの形成に至る系譜を辿る。流し読みしただけ。 Searle, J. Mind, Language and Society: Philosophy in the Real World. Basic Books. 1999. 原書を参照し…

岡義武『近代日本の政治家』

岡義武『近代日本の政治家』岩波現代文庫、2001年。 戦前日本を代表する五人の政治家、すなわち伊藤博文・大隈重信・原敬・犬養毅・西園寺公望の評伝。昨年同著者の『山県有朋』を読んだときには、こうした政治家の性格だとか心情を描いた伝記を読むことの意…

『岡義武著作集』第一巻

『岡義武著作集』第一巻、岩波書店、1992年。 「明治政治史 I」ほか三篇を収める。「明治政治史」は第二巻まで続く通史で、第一巻は第一議会の開設までを通論している。各階層・地位の人々が各々いかなる状況に置かれた結果いかなる行動を取ったかということ…

大戸千之『歴史と事実』

大戸千之『歴史と事実』京都大学学術出版会、2012年。 1章ではヘロドトス以前のギリシアにおける歴史叙述の萌芽が概観される。2-4章は、ヘロドトス、トゥキュディデス、ポリュビオスの歴史叙述を、古典学の成果を踏まえつつ近代的歴史理論の観点から検討する…

伊藤邦武『プラグマティズム入門』

プラグマティズム入門 (ちくま新書)作者: 伊藤邦武出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2016/01/06メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見る 伊藤邦武『プラグマティズム入門』ちくま新書、2016年。 パース・ジェイムズ・デューイといった古典的哲学者…

M. I. フィンリー 『民主主義』

民主主義―古代と現代 (刀水歴史全書)作者: モーゼス・I.フィンレイ,柴田平三郎出版社/メーカー: 刀水書房発売日: 1991/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る M. I. フィンリー『民主主義:古代と現代』刀水書房、1991年。 古典学者フィンリ…

『読書について』について

読書について 他二篇 (岩波文庫)作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤忍随出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/07メディア: 文庫購入: 27人 クリック: 297回この商品を含むブログ (177件) を見る ショーペンハウアーの読書論について書いた…

中井久夫『分裂病と人類』(、『西欧精神医学背景史』)

新版 分裂病と人類 (UPコレクション)作者: 中井久夫出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2013/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 西欧精神医学背景史 【新装版】作者: 中井久夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2015/11/25メデ…

小田中直樹『歴史学ってなんだ?』

歴史学ってなんだ? (PHP新書)作者: 小田中直樹出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2004/01メディア: 新書購入: 6人 クリック: 42回この商品を含むブログ (70件) を見る 小田中直樹『歴史学ってなんだ?』PHP新書、2004年。 1. 歴史学は史実を明らかにできる…

S. バロン=コーエン『自閉症スペクトラム入門』

自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識作者: サイモンバロン=コーエン,Simon Baron‐Cohen,水野薫,鳥居深雪,岡田智出版社/メーカー: 中央法規出版発売日: 2011/08メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 30回この商品を含むブログ (4件)…

B. コンスタン『アドルフ』

アドルフ (岩波文庫)作者: コンスタン,大塚幸男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1965/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (10件) を見る バンジャマン・コンスタン『アドルフ』岩波文庫、1965年。 フランスの自由主義者・ロマ…

Levinson, J. "What a Musical Work is, Again"

Music, Art, and Metaphysics: Essays in Philosophical Aesthetics作者: Jerrold Levinson出版社/メーカー: Oxford University Press, U.S.A.発売日: 2011/05/12メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る Jerrold Levinson "What a Musical Work…

西田亮介『メディアと自民党』

メディアと自民党 (角川新書)作者: 西田亮介出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/10/24メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 西田亮介『メディアと自民党』角川新書、2015年。 メディアと日本政治の関係(とりわけ両者の両者に対す…

伊藤貞夫『古典期アテネの政治と社会』

古典期アテネの政治と社会 (歴史学選書 5)作者: 伊藤貞夫出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 1982/03メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 伊藤貞夫『古典期アテネの政治と社会』東京大学出版会、1982年。 古典期、すなわ…

池内『イスラーム国の衝撃』 / アトワーン『イスラーム国』

イスラーム国の衝撃 (文春新書)作者: 池内恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/01/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (44件) を見る イスラーム国作者: アブドルバーリ・アトワーン,中田考,春日雄宇出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発…

『苦海浄土』について

昨日は『苦海浄土』の第一部を読み返してひとに紹介するための小文を書いた。宮本常一うんぬんは内輪ネタ。 水俣病を描いたノンフィクションである。1969年、すなわち水俣病が表面化して十余年の後、チッソに対する第一次訴訟がようやく緒についたおりに発表…

小杉『イスラームとは何か』 / 井筒『イスラーム文化』

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)作者: 小杉泰出版社/メーカー: 講談社発売日: 1994/07/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 44回この商品を含むブログ (42件) を見る イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)作者: 井筒俊…

D. スペルベル『表象は感染する』

表象は感染する―文化への自然主義的アプローチ作者: ダンスペルベル,Dan Sperber,菅野盾樹出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2001/10メディア: 単行本 クリック: 19回この商品を含むブログ (7件) を見る ダン・スペルベル『表象は感染する』新曜社、2001年。 …

西垣・伊藤『よくわかる社会情報学』

よくわかる社会情報学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)作者: 西垣通,伊藤守出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2015/05/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 西垣通・伊藤守『よくわかる社会情報学』ミネルヴァ書房、2015年 社会情報…

イェーリング『権利のための闘争』 / 村上『……を読む』

『x を読む』系の本を読みつつ x を読むシリーズ第一弾。ちなみに他に x に代入されるべき積読に丸山眞男『日本の思想』とベンヤミン「歴史哲学テーゼ」がある。 権利のための闘争 (岩波文庫)作者: イェーリング,Rudolf Von Jhering,村上淳一出版社/メーカー…

山腰『コミュニケーションの政治社会学』 / リリカー『政治コミュニケーションを理解するための52章』

山腰修三『コミュニケーションの政治社会学』 コミュニケーションの政治社会学―メディア言説・ヘゲモニー・民主主義 (MINERVA社会学叢書)作者: 山腰修三出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2012/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る …

読書記録の方法

去年書き残していたメモ。 [読書メモをいかに書くか] 前半に内容を要約する。小説ならあらすじを書く。詩を要約するのは無理だろうから、代わりに何が収録されているかなどを書く。 後半において内容を論じる。全体的な印象のよしあしなどはごく簡潔に記すに…

森本あんり『反知性主義』

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)作者: 森本あんり出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/02/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (23件) を見る 森本あんり『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』新潮選書、2015年。 概…

S. ピンカー『人間の本性を考える』上巻

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)作者: スティーブン・ピンカー,山下篤子出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2004/08/31メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 69回この商品を含むブログ (119件) を見る スティーヴン・ピンカー『…

斎藤編『連続講義 現代日本の四つの危機』

連続講義 現代日本の四つの危機 哲学からの挑戦 (講談社選書メチエ)作者: 齋藤元紀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/08/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 斎藤元紀編『連続講義 現代日本の四つの危機:哲学からの挑…

鈴木ほか『ワードマップ 現代形而上学』

ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎作者: 秋葉剛史,倉田剛,鈴木生郎,谷川卓出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2014/02/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『ワードマップ …

『江戸川乱歩傑作選』

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)作者: 江戸川乱歩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1960/12/27メディア: 文庫購入: 16人 クリック: 89回この商品を含むブログ (137件) を見る 江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫、1960年。 「二銭銅貨」「二癈人」「D坂の…

吉見『メディア文化論』

メディア文化論 --メディアを学ぶ人のための15話 改訂版 (有斐閣アルマ)作者: 吉見俊哉出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2012/12/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る 吉見俊哉『メディア文化論』有斐閣、2012年。 I. メデ…

廣松渉『世界の共同主観的存在構造』

世界の共同主観的存在構造 (講談社学術文庫)作者: 廣松渉出版社/メーカー: 講談社発売日: 1991/11/05メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (19件) を見る 廣松渉『世界の共同主観的存在構造』講談社学術文庫、2009年。 廣松渉(1933-…

和辻哲郎に関する論文いくつか

濱井修 (1999)「人間存在論と間柄の倫理: 和辻哲郎とK・レーヴィット」 ―― (1999)「人間存在論と間柄の倫理(続): 和辻哲郎とK・レーヴィット」 浜渦辰二 (2012)「和辻哲郎の『人間学としての倫理学』: 日本におけるドイツ哲学の受容」 星野勉 (2007)「和辻…

K. レーヴィット『共同存在の現象学』

共同存在の現象学 (岩波文庫)作者: レーヴィット,熊野純彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/10/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 26回この商品を含むブログ (32件) を見る K. レーヴィット『共同存在の現象学』熊野純彦訳、岩波文庫、2008年。 カ…

森鷗外『阿部一族 他二篇』

阿部一族―他二編 岩波文庫作者: 森鴎外出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/12/14メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (9件) を見る 森鷗外『阿部一族 他二篇』岩波文庫、2007年。 「興津弥五右衛門の遺書」「阿部一族」「佐橋甚五郎」を収…